HNチャンガーの
考えるパン屋
第6回  デンマーク ペストリーを作る
 

 パン屋さんには色々なパンが置いてありますが、デンマーク ペストリー(以下デニッシュといいます)はその中でも特殊なパンと言えるでしょう。デニッシュはクロワッサンや、私の店ではフルーツをのせているものでサクサクとした食感を楽しむパンです。


 デニッシュはパンの生地にバターを包み、長方形に伸ばして3つ折にして、冷蔵庫で休ませ、また伸ばして折ることを3回繰り返して27の層を作ります。できた生地は生地、バター、生地、バター・・・の層になっています。この生地を焼くとバターが溶けて、生地にしみ込みます。もともとバターのあった空間には生地の水分が蒸気となって入り込み、上の層を持ち上げます。これが27層分積み重なって、ハラハラとくずれるパンになるしくみです。

 ちなみにパイはデニッシュに比べると1回か2回折込(おりこみ)が多く、層は97以上になっています。そして生地にイースト菌を入れず、発酵過程がない点でデニッシュとは異なる食べ物です。







 
デニッシュの由来は「フランスのうっかりパン屋さんが生地にバターを練り込む工程で、バターの塊を生地に残してしまい、しかたなくバターの固まり入りの生地を残したまま伸ばして焼いたところ、サクサクした食感のパンができた」ということらしいですが、本当のところはどうかなと思わせる話です。

 そのパン屋さんは相当うっかり者ですね。(「デンマークの」という意味でデニッシュと名前がついているのに、何でフランスのパン屋さんの話なのか現時点では不明です。調べてみようと思います。)



 
デニッシュは手間と時間が他のパンよりも2倍も3倍もかかるのですが、私にとって一番作っていて楽しいパンです。クロワッサンなら二等辺三角形に、フルーツをのせるものなら正方形に正しく切り分けねばなりません。少しでもゆがむと重さが変わり、出来上がりがバラバラになるからです。正しく成形できたときなど、「小麦粉がこんなに変わるなんて」と嬉しくなります。

 

 デニッシュは生地が薄く延ばされているので、窯から出して冷めはじめると空気中の湿気を吸って、徐々にサクサク感がなくなります。ですが、もし湿気ていても、あらかじめ温めて置いたオーブントースターがあればその中で少しあぶると、湿気が飛んで焼き上がりの食感が戻ります。



 今から秋から冬にかけては空気が乾燥して、デニッシュの美味しい季節といえるでしょう。よく晴れた日はデニッシュと紅茶を入れて、優雅なおやつを楽しんでみてはいかがでしょうか。





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