水俣病とは、魚介類を介して発生するメチル水銀中毒症で、工場排水に含まれたメチル水銀が海や川の魚介類を汚染し、それを食べた人に発症する公害病。これまでに水俣湾を中心に不知火海(八代海)沿岸地域に広く発生した熊本水俣病と新潟県の阿賀野川下流域に発生した新潟水俣病(第二水俣病)の二つがよく知られている。(熊本水俣病と新潟水俣病だけでなく、有明海の第3水俣病、山口・徳山湾の第4水俣病などなど、政府が認定していないメチル水銀中毒もある)
公害病としての水俣病は、メチル水銀中毒症という医学的な側面と巨大公害事件としての社会的な側面の両面を併せもっている。水俣病は、生体が本来持つ防御機構によって脳や胎児は守られているというそれまでの医学上の常識を覆し、化学物質への警鐘をならしたもの。

いうまでもなく水俣病は、食べもの(魚)による影響で胎児に障害[胎児性患者]がでた公害病で、世界で始めて人体への影響を知らしめた環境問題の原点である。しかし、なぜ「水俣病」という、その地域に限定された特殊な病気との印象を与えかねない病名がつけられたのか?もし、「有機水銀中毒」とか名づけられていたら、あちこちの工場地帯の実態把握がより早くでき、防御できたかも知れない。その水俣病に類意した病名・病気が多々ある。日本だけでなく世界中に!

詳しくは原田正純先生著作の「胎児からのメッセージ」を読んでいただきたい。本は薄くても内容の濃いお薦めの本である。また、水俣市の「水俣病センター相思社」を訪ねていただきたい。水俣湾内の百間排水口のところに溜まっていた4mもの水銀ヘドロの深さに驚かされる。

なぜ胎児が影響を受けやすいか?言わずともご理解いただけるであろうが、胎児は成長過程においてもっともデリケートな時期である。又、体内のホルモン・レセプター(ホルモンをキャッチするアンテナのようなもの)が、成人のそれに比べ認識能力に欠けているからだという。環境ホルモンや化学物質は母体の胎盤の防御をやすやすとかわし、子宮内に入り込み害を与える。

人間の体内に及ぼす環境は色々あるが、例えば、ゴミを燃やすときに生成される猛毒ダイオキシン。その主役は塩素。塩化ビニルやPCBなどゴミの中の有機塩素化合物が炎の中で化学反応するらしい。微量とはいえダイオキシンは発ガン性も催奇性もある猛毒である。環境ホルモンが人に影響を与える量は、スプーン1杯を大きいプールに入れた量でも作用するピコグラムの世界である。

ここで驚く実話をご紹介しよう。埼玉県所沢市のほうれん草で有名になったダイオキシン問題。所沢市は東京都心のゴミが集められる所。又、埼玉県は数年前、新生児死亡率が日本一ということを市民が不思議に思い、調査団を立ち上げ、大学の教授らと研究した結果、原因は所沢市が助成金を出し各戸に設置した個人焼却炉から出るダイオキシンと判明。1400℃の恒温高焼却炉で燃やすとダイオキシンは分解できるのだが、個人焼却炉では無理な話である。よってその空気環境で暮らした妊婦から生まれた新生児に悲しい結果が出たという。

ここで一つ余談であって欲しいと私が首をかしげること。昨年の熊本県の新生児死亡率は日本一ということ。なぜ???

さて現在、野焼きは罰金50万円ということだが、お金で処理をしなくては規制できない世の中、環境を前面に打ち出しても阻止はできないのであろう。

確かに、現代の生活は豊かで便利になった。しかし、その一方で、すべて母親の「食」や「自然環境」の影響で胎児が左右される「可能性がある」ことをしっかり認識して欲しい。被害を受けるのはそれを食した母ではなく、血を分け、おなかを痛めたかわいい我が子なのだ。独身女性だけではなく、大人はだれしも次世代の子供たちの未来を考え、この真実を正確に教え、伝え、学ぶ義務があり、現代の生活のつけを次世代に残さないような暮らしをしていくべきだ。

また、「命」の価値を考えるに、こども達を左右するのは何も食や自然環境だけではなく、「心」の影響も多々ある。毎日のように掲載されている目を疑いたくなる虐待やいじめの記事に深いため息をついてしまう。悲しいかなここ八代市での状況も頭を悩ますことばかり。

先日、八代市で開催された熊本県主催「子育て応援フォーラムin八代」のパネリストで子育て支援に頑張っておられる美香ママさんに八代管内の児童虐待の現況と資料とこども達へのメッセージ/お薦めの本を紹介していただいた。子育てに悩んでいる方は必見!ここをクリック

最後に「子育て応援フォーラムin八代」で、私が感銘を受けた言葉を紹介したいと思う。

もう一人の偉大なパネリスト、八代ナザレ園の富田園長先生のお話である。

「いつの時代においても家庭的な、あるいは社会的な事情から子供が親元を離れて過ごさざるを得ない場合があり、それを受け入れる家は必要です。八代ナザレ園はその為に103年間続いています。しかし、今日の子育ての実情は、虐待、ネグレクト(不適切な養育)で園に入ってくる子供が増え、親子の関わり方そのものが大きな問題となっています。地域子育て支援活動の輪を広げ、住民が一体となって地域の子育てに関わり、園の入り口にくる前に親子を守り、支え、励ましていってもらいたいと思います。」

ナザレ園のこども達の笑顔にそんな状況を感じさせないところに富田園長先生の功績を感じるのは確かである。

では、2月は「森と海と川」を守る“循環”でお会いしましょう。

   今年も「ごろっと環境」を最後までご覧いただきますよう、よろしくお願いいたします。(あと2回)

1月号 胎児からのメッセージ   環境問題「水俣病」

(このタイトルは熊本学園大の原田正純先生の著書から)

 「この子は宝子たい」。そしてその理由は「この子が私が食べた水銀を1人で吸い取って背負ってくれたとばい、それで私もその弟も妹たちもみんな助かったとです。この子は我が家の命の恩人ですたい」
重症水俣病患者:上村智子さんのお母さんの言葉より
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