きまぐれトリル

第五楽章

一人旅。
得たものは大きかったですね。

滞在期間中、作曲家の足跡を踏みに、ベートーヴェンやモーツァルト、ハイドンの家を回りました。

踏み入れた瞬間に、体中の毛穴から何かゾーッっとするものを感じました。
「この家にあの大作曲家が住んでいたんだぁ」と。あまりにも偉大過ぎて遠い存在でしたが、彼らも一人の人間としてここに生活し、仕事や恋愛をし、そこから数々の名曲を残した。それを何百年も後に生まれた私が演奏し、縁あって同じ空間に居る。
歩くと床がきしんだり、窓から見える風景をどんな思いで眺めていたのか・・
特にベートーヴェンが遺書を書いた家に入った時は、何とも言えない気持ちでした。
心のそこから彼らを尊敬し、これからの演奏の取り組む姿勢を変えようと思いました 。

 レッスンはとてもレベルの高いものでした。
日本以外にもロシア、韓国、中国などから参加していて、みんな素晴らしい演奏でした。
中には14歳の青年(ロシア)いて、しかも私たち以上に上手い!!
彼は「有名になりたい」と言っていましたが、ピアノを習い始めたのはなんと9歳!
まだピアノに触れて5年しか経ってないのに、この上手さはまさに天才だ!と、なんだか自分が情けなくなりました・私の先生は、最近までピアニストとしてヨーロッパで活躍していたということもあり、彼を目的にレッスンを受けに来た人も多く、素晴らしい実力者でした。

  先生が私にくださった印象的な言葉は、「君が音楽を演奏するのではなくて、音楽(ピアノ)が君の心を開放してくれるんだよ。」という言葉。
レッスンは公開制だったため、ほかの人の演奏も聴くことが出来ましたが、“私の演奏どうなの!!”といわんばかりの魂のこもった演奏にくらくらさせられました。

ウィーンでの経験は、私に底辺を教えてくれました。
お陰で、これまでとは違った演奏が出来そうです。

いい旅でした
(写真もあるので、どうぞご覧になってください)

飛行機からの雲の写真・・・
あまりにも美しいので。11時間30分、飲んで食べての繰り返し。
シュッテファン寺院・・・
ウィーンの中心部にある一番古い教会。ここの地下室にはハプスブルク皇族のお墓だけでなく、内臓も奉ってある。 コースとして見れるが不気味で気を失う人もいるらしい。
シュテファン寺院の隣・・・
ベートーヴェンのお葬式が行なわれた教会。変人扱いされていた時期もあったが、後に称賛され、葬儀にはウィーン中の全作曲家と何万人もの市民が参加し敬意を示した
大学の練習室・・・
実はこのグランドピアノは鍵が掛かっていて使えず、手前にある音の狂ったアップライトピアノで練習した・・。 高いお金出してるんだから使わせてほしい、と皆愚痴ってた。
演奏家・・・
ウィーン伝統料理を食べにレストランで。呼んでもないのに日本人と分かったらしく、チップを渡すまで何曲も演奏してくれた。 「上を向いて歩こう」を「トヨタ・ミツビシ」に替え歌したサービスもしてくれたけど、見つめられて困った。
フィガロハウス・・・
モーツァルトが一番幸せだった頃に住んでいた家。4つ部屋があって、遺品が展示してあった。街のど真ん中にある。
ビールとグラーシュ・・・
伝統料理のグラーシュ。シチューみたいなもので凄く美味しかった!一つレッスンが終わる度に美味しいものを食べに。ウィーンの人は昼間から水の代わりにワインやビールを飲んでる。(ビールが凄く安い!)私は毎晩ビールを
ヴェルデヴェーレ宮殿・・・
ハプスブルク家の夏の離宮。この裏にもう一つある。中には天井画、壁画が一面に。金ぴか遺留品がたくさん。現在は美術館で観光名所となっている。あまりにも豪華で「これじゃあ、市民に反感をかわれても仕方ない」と思った。
べートーヴェンの夏の家・・・
耳の治療(温泉治療)のためここに来たらしい。今は普通のアパートとして一般人が住んでる。
ハイリゲンシュタットの遺書の家・・・
ベートーヴェンが遺書を残した家。ここの係りのお
じいさんはスキンシップが行き過ぎていて、友達は
キスをされたり抱きしめられたりしたらしい。ある意味怖かった。
大道芸人・・・
空き瓶をならして、演奏していた大道芸人。結構、難曲を披露していた。街には楽器を演奏する人がたくさん。中にはパントマイムするモーツァルトもいた。
ハイドンの家・・・
ハイドンが死ぬまで住んでいた家。自画像があったが、頭が剥げていた・・当時のくるくる頭はかつらだった。
ケーキ・・・
練習の帰りに一人でカフェへ。ウィーンは美味しいケーキのお店がたくさんあって、結構回った。でも甘すぎて半分は居残り給食のようにチビチビと。隣にいたおじいさんが同じものをペロッとたいらげて席をあとにしたときには、「負けられん!」と頑張った。
先生と・・・
実は、資料に載ってた写真は髪がふさふさしていたので、初対面時は誰だか分からなかった。先生は神経質で演奏会の前になると、ナーバスになり十円剥げができるからいっそのことこの頭に! とても紳士で素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
中華料理店・・・
ウィーン滞在4日目にして、初めて温かい料理を口にした。しかも初お米に感動!! 一人旅で右も左も分からず、困っていたが、この方たちのお陰で情報を得られ何とか生活できた。大切な人です。
お墓・・・
中央墓地といって、一般市民のお墓がある所の一角に音楽家たちのお墓がある。モーツァルトは謎の死を遂げた為、どれが本当のお墓か分からない。ここには記念碑があるが、一説によるとここの骨はモーツァルトの遺伝子に似ているらしい。すごくインスピレーションを感じたところ。

 


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コラムの著者
(ナチュラル) さん。 八代で活躍中の音楽家・ピアニスト。