2003年9月22日(月)朝日新聞より

環境ホルモン指摘 ビスフェノールA

“体内で作用1000倍・・・広島大で研究 特定酵素と反応”
プラスチック樹脂の原料などに使われ、環境ホルモン(内分泌攪乱)作用が指摘されている有機化合物「ビスフェノールA」(BPA)が、肝臓の特定の酵素との反応で作用が約1000倍強い別の物質に変化する事が、広島大学大学院医歯薬学総合研究科の吉原新一助教授(薬物代謝学)らの研究でわかった。健康な成人の体内では起こりにくいが、肝臓が機能し始めたばかりで解毒作用が弱い妊娠後期の胎児は直接影響を受ける可能性があるという。
 同教授らはねずみの肝臓組織をすりつぶした成分をBPAと反応させ、生成物の環境ホルモン
作用を調べた。肝臓中の複数の酵素との反応でBPAから4種類前後の物質ができることが判明。
その中の特定の酵素との反応で生じるやや大きな分子があり、BPAの数百〜千数百倍の環境ホルモン作用を示した。同様の酵素を持つ人の肝臓組織でも同じ反応が起きる事が分かった。
 通常の成人の肝臓内では、BPAを無毒化する酵素が働くため反応は起きにくいが、胎児の場合はその酵素が弱く、環境ホルモン作用の強い生成物が発生するおそれがあるという。
 BPAの環境ホルモン作用は本来の女性ホルモンの数千〜1万分の1程度とされるが、この生成物はBPAと女性ホルモンの中間程度の作用があるとみられる。
 環境省が民間研究機関に依頼した実験で、BPAを使ったプラスチック容器に熱湯など繰り返し注ぐと、微量のBPAが溶け出すことが分かっている。京都大学の共同研究チームの調査では、母親の体内に接種されたBPAは、へその緒を通じて胎児に達する事も報告されている。
 

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